2025/03/17

■ FSMS News 2024-4■━━━━━━━━━━━━━2025年 3月17日■


 


今回は、「表示とアレルギー」について、がテーマです。



食品表示法、個別的義務表示、横断的義務表示、アレルゲン表示の表示方法などの具体的な
解説ではないことをご理解ください。

 
~食品表示制度の変遷について~
まず、食品表示法制度が制定されるまでの主要な食品表示制度の変遷について触れます。昭和
22年(1947年)食品衛生法制定、昭和25年(1950年)JAS法制定、昭和27年(1952年)栄養改善法
制定、昭和35年(1960年)ニセ牛缶事件(牛肉の缶詰が原料にクジラ肉、馬肉が使用されていた
食品偽装)、昭和37年(1962年)景品表示法制定、平成6年(1994年)製造年月日から期限表示へ、
平成11年(1999年)全ての飲食料品に品質表示を義務付け(農林水産省管轄;品質表示基準)、平成
13年(2001年)遺伝子組換え食品に係る表示の義務付け、アレルギー物質を含む食品の表示制度
を創設、平成25年(2013年)食品表示法の制定、平成27年(2015年)食品表示基準が施行されて
きました。
 
上記の変遷では、事故・事件がきっかけで制定・施行・改正されてきた歴史もありますが、食
品衛生法では「食品の安全の確保のために公衆衛生上必要な情報を示す」、JAS法・品質表示
基準では「消費者の選択に資するための品質に関する情報を示す」、健康増進法では「国民の
健康の増進を図るための栄養成分及び熱量に関する情報を示す」、景品表示法では「不当に顧
客を誘引して消費者の選択を阻害する恐れがあると認められる表示の禁止、虚偽、誇大な表示
の禁止」を目的のもと法令が定められてきました。この食品衛生法、JAS法・品質表示基準、
健康増進法の3法を集約し食品表示法が制定され、具体的に運用するにあたり食品表示基準が
施行されました。
私事ですが、特に食品衛生法、JAS法・品質表示基準の異なる省庁が主幹であったころは、非
常に大変かつ複雑・面倒でなんとかならないものかと日々つぶやいていた記憶があります。
 
何れも目的を遂行するため、衛生事項:衛生上の危害発生を防止し、国民の健康の保護を図る
ために必要な食品に関する表示事項(名称、アレルゲン、添加物、遺伝子組換食品表示、消費
期限、賞味期限、保存方法、製造所等)、品質事項:食品の品質に関する表示の適正化を図るた
めに必要な食品に関する表示事項名(名称、原材料名、遺伝子組換食品表示、原料原産地名、
原産地・原産国名、内容量、食品関連事業者等)、保健事項:栄養の改善その他、国民の健康の
増進を図るために必要な食品に関する表示事項(栄養成分表示、機能性食品表示、特定保健用
食品表示等)が定められています。
食品表示の運用において、法令の遵守は必須ですが、目的をよく理解・認識すること、消費
者のためのものであることを忘れずに運用して頂きたいと思います。企業優先の運用での歪
が知らず知らずうちに消費者を巻き込み大きな事故になり、歴史を繰り返すこととなること
が、歴史を物語っていると思います。また、自分達の関係する箇所のみをフォーカスして理
解や作成・検証は、法令の逸脱や回収/リコールの発生要因の一つになると考えます。繰り
返しになりますが、目的を理解し・認識の上、食品表示法、食品表示基準を体系的に理解し、
横断的義務表示を理解し、次に関係する個別的義務表示を理解し運用されることを望みます。
上位の法令に対する理解・認識と担当者への継続した教育訓練も重要と考えます。


~食物アレルギー表示制度の変遷について~
食物アレルギー表示制度の変遷について触れます。平成13年(2001年)4月食品衛生法改正に
より、特定原材料(義務)5品目 乳、卵、小麦、そば、落花生、特定原材料に準ずるもの(推奨)
19品目を通知で規定。平成16年(2004年)12月 特定原材料に準ずるものに「バナナ」が追加。
平成20年(2008年)6月 特定原材料に準ずるものであった「えび・かに」を義務表示である特
定原材料に移行(義務7品目・推奨18品目)。平成21年(2009年)9月消費者庁設置。平成25年
(2013年)9月 特定原材料に準ずるものに「カシューナッツ」「ゴマ」を追加(義務7品目・推
奨20品目)。平成27年(2015年)4月食品表示法施行。令和元年(2019年)9月 特定原材料に準
ずるものに「アーモンド」を追加(義務7品目・推奨21品目)。令和5年(2023年)3月定原材料
に「くるみ」を追加(義務8品目・推奨20品目;2025年4月1日完全施行)。令和6年(2024年)
3月特定原材料に準ずるものに「マカダミアナッツ」を追加、「まつたけ」が削除(義務8品目
・推奨20品目)。令和7年(2025年)1月 特定原材料に「カシューナッツ」、特定原材料に準ず
るものに「ピスタチオ」を食物アレルギー表示に関するアドバイザー会議に提案し、2025年
度中に追加することを目指す。
近年ナッツ類の追加が目立ちますが、ナッツの摂取量と摂取人口が増えていることに伴い症例
も増えている背景があります。
 
食物アレルギー表示制度の意義は、除去と原因究明と考えます。
①除去による健康危害の防止。食物アレルギーの原因となるアレルゲンを摂取しないこと(正
しい診断に基づいた必要最小限の原因食物の除去)で発症を防ぐ。➁原材料調査による発症原
因の究明。アレルギー発症の原因究明のために原材料を調べることが多くあるため、食物ア
レルギー表示制度が重要です。
 
食物アレルギー表示は、アレルギーを持っている方々を守ることが大前提で制度ができまし
た。アレルギーを持っている方々は、個々に感受性がことなることから個別表示で表示する
ことで進められていましたが、表示面積に限りがあることから、原材料名表示の最後に一括
して表示、原材料名と添加物名の項目にて表示する場合は、各々の最後に一括して表示する
方法も取入れられ、個別表示若しくは一括の表示の何れかを選択し表示することが決定され
ました。
 
表示は、①容器包装された加工食品が義務付け、➁特定原材料は義務、特定原材料に準ずる
ものは推奨、③原材料の中の個々の特定原材料等の総たんぱく含量が一定以上(数μg/g以上
又は数μg/ml以上)含まれている場合に表示が必要、③重篤度・症例数の多いものを対象と
していく。2024年3月時では、特定原材料8品目;えび、かに、くるみ、小麦、そば、卵、乳、
落花生、特定原材料に準ずる20品目;アーモンド、アワビ、イカ、イクラ、オレンジ、
カシューナッツ、キウイフルーツ、牛肉、ゴマ、サケ、サバ、大豆、鶏肉、バナナ、豚肉、
マカダミアナッツ、桃、山芋、リンゴ、ゼラチン、③意図しない混入への対応(製造時)1)食品
を製造する際に、原材料としては使用していないにも関わらず、特定原材料等が意図せず最終
製品に混入されてしまう場合、2)意図しない混入防止策の徹底を図ることを大前提に、2)-1
必ず混入する場合には、通常の原材料として食物アレルギー表示を行う、2)-2十分な対策を
図っても、混入の可能性を排除できない場合には、注意喚起表示を行う、2)-2の場合であっ
ても、混入の頻度と量が少ない場合には、表示の必要はない。3)可能性表示の禁止。混入防
止策の徹底を図っても混入の可能性を排除できない場合に「入っているかもしれません」
「入っている場合があります」などの可能性表示は、たとえ一括表示欄外であっても認めら
れない。
 
法令の理解と遵守は最低限必須ですが、上記の通り、アレルゲンを持っている方々の身体(命)
を守るため、もう一つは食べられるものの範囲を意図的に狭くしないため(選択の権限)の目的
を踏まえ理解し、アレルギー表示と枠外の注意喚起表示のルールに従い、運用されることを
望みます。
 
商品回収/リコールの原因の60%が食物アレルギー表示ミスです。各企業共に新商品、仕様
変更の表示作成の流れ、表示の検証の仕組みはあると思います。既存品も含めた食物アレル
ギー表示管理の手順などの定期的レビュー(PDCAのCA)を推奨します。
特にナッツ類は法改正が続くため注意してください。
FSMS、FSSC認証をされている組織様も業務活動と統合されているマメジメントシステムの
中で今一度振り返りをして頂くことを望みます。例えば、食物アレルギー表示の流れ(例えば;
原材料情報入手:食物アレルギー表示が必要となる原材料を確認。原材料表示作成:重複する
特定原材料等も含めて、全てを表示してみる。アレルギー表示作成。表示作成: 原料規格書、
処方、商品仕様書、表示の突合せと校正)、食物アレルギー表示の検証(例えば;表示の検証:
製造記録と表示の突合せ。原材料中の特定原材料等の情報を検証。製造記録と使用原材料
との整合性を確認。)、サプライヤー管理(例えば;原材料の精査・サプライヤーの精査:新規
サプライヤー採用時の現場確認とアレルゲン管理状況の確認、原料規格書の最新版管理、
輸入原料の場合の法規・言語の違いや距離・時差からの情報遅延・齟齬に注意、法改正前
のアンケート調査などによる、改正後に備えた情報収集)、交差汚染の確認と対策・検証管
理(例えば;フローダイアグラム、人・物の流れの生産施設図面、危害分析表の道具の利用、
環境モニタリング検査、製品検査)などの管理について、検証及び分析評価し、新商品、仕
様変更品、既存製品の一括表示(枠内表示)と注意喚起表示(コンタミネーション表記)の適切
性・妥当性を確認する(証明する)。また、仕組みの必要な更新を望みます。
 
~今後の食品表示の動き~
最後に今後の食品表示の動きについて触れます。
●コーデックス規格との整合性対応
「農林水産物・食品の輸出拡大実行戦略」(関係閣僚会議)が令和4年12月に改訂され、現行
食品表示制度がコーデックス規格との整合性との観点も含め見直されることになりました。
現行の食品表示基準とコーデックス規格とでは、原材料名としての「水」の表示や添加物
の識別番号制や一括名などいくつかの相違があり、今後の検討を注視されています。



●包装前面栄養表示((Front of Pack Nutrition Labeling:FOPNL)
諸外国では各国の健康・栄養政策を踏まえ、消費者が食品の栄養価や食品の選択に対する
理解を高めるため、義務的表示に加え、包装の前面に栄養表示に関して分かりやすく消費
者に訴求する「包装前面栄養表示」を導入されている。
年内に日本版FOPNLの書き方をどうするかを12月にいくつかに絞られ、来年パブコメに
てどれが分かりやすいかを決定する。当面は任意。
エネルギー、たん白質、脂質、炭水化物、食塩相当量。
日本の場合、塩分過剰があることから、食塩相当量の示しかたに工夫が入るようである。



●期限表示はゆるめる方向性で検討されている

●個別的義務基準を横断的義務基準に合わせられるものは、シフトして(合わせて)いく
ことが検討されている。業界団体と消費者団体の意見のもと。

※食品表示懇談会はWebで視聴や議事録を確認できます。加え、意図も確認できる​ので
推奨します。


この情報が、皆様の食品安全の情報源として、少しでもお役に立てれば幸いでございます。
次回をお楽しみに!